あらすじ
三十四歳、元中学校教師の三枝真帆は、うつ病で休職して一年半。
世間はゴールデンウィーク最終日――だが彼女にとっては、終わりの見えない「長すぎる夏休み」だった。
社会復帰への不安、迫る傷病手当の期限、そして何も感じられなくなった心。
ある早朝、導かれるように訪れたかつての勤務校。
そこで彼女は、誰もいないはずの四階の音楽準備室から「リコーダーの音」を聞く。
――あの教室は、まだ待っている。
怪談のはずだった場所で出会ったのは、恐怖ではなく、取り残された時間と「言えなかった想い」だった。
これは、奇跡ではない。
それでも確かに、ひとりの人間が「もう一度、前を向くまで」の物語。