あらすじ
三十三歳、看護師の神崎遥は、適応障害からうつ病を発症し休職して四ヶ月。
冬の混乱した日々を抜け、季節は梅から桜へと移り変わっていた。
復職まで、あと十日。
それでも彼女の心は、不安に押し潰されそうになっていた。
「もっと楽に生きてもいい」――そう思えるようになった一方で、再び医療現場に戻ることへの恐怖は消えない。
そんなある日、彼女は足を運んだ病院で、誰もいないはずの402号室へと導かれる。
深夜に鳴るナースコール。
残された人の形の窪み。
そして、「まだ終わってない」と囁く声。
それは怪異なのか、それとも――
命と隣り合わせの現場で、途切れた「その先」と向き合うとき、彼女自身の「終わっていないもの」もまた浮かび上がる。
これは、恐怖では終わらない。
不完全なまま生きていくことを選ぶ、一人の看護師の物語。