あらすじ
嘘をつくたびに、みぞおちに石が落ちる。
水無瀬透、五十歳。会社では手癖で資料を書き、家では子供に「別に」と言われ、妻がラップに書いた文字すら読めなくなっている。ある日、上野の美術館でダ・ヴィンチの人体図を見た。腕が四本しかない。記憶では六本だったはずだ。
記憶のずれに気づいた人々と出会い、言葉が飲み込まれるたびに世界が少しずつ動いているという仮説を聞く。神保町のバー、路地裏の蕎麦屋、札幌の古い寮の扉。透は四十年前に封じた記憶——小学校の先生に向かって発した、取り返しのつかない一言——と向き合い始める。
飲み込んだ言葉は、石になって体の中に残る。その石を、少しずつ外に出していく物語。
※本作は小説家になろう・noteでも掲載しています。