あらすじ
博士論文が通らなかった。五年が、消えた。
二十代の終わりに向かう春、瀬尾栞は逃げるように故郷の海辺の町・汐ノ崎へ帰ってきた。
かつて「留まること」の象徴として嫌った海、細くなった商店街、何も訊かない母。
すべてが十年前のまま、静かにそこにあった。
浜で再会したのは、幼馴染の渚。
子どものころから海に潜り、今は海女として暮らしている。
渚は栞の失敗を知っていた。けれど一度も触れなかった。
ただ隣に立って、同じ海を眺めた。
上編は栞の視点で、下編は渚の視点で、同じ春を描く。
ふたりの距離が少しずつ縮まっていく、海辺の百合小説。
※全八話・完結済み。