あらすじ
病弱で屋敷の離れに閉じ込められた伯爵令嬢リリアーナ。彼女にとって唯一の心の支えは、顔も名前も知らない「S」との七年間の文通だった。詩や哲学を語り合い、いつか会える日を夢見て月下美人の押し花を贈った——そんな大切な人。しかしある日、妹セラフィーナが婚約者を連れてきた瞬間、リリアーナの世界は崩れ落ちる。「姉様がずっと続けていた文通、私が代わりに返事を書いていたの」妹は三年前から手紙を奪い、「S」ことシリウス公爵子息になりすましていたのだ。奪われた想い、届かなかった言葉、すべてを諦めようとしたリリアーナ。だが、シリウスもまた違和感に気づいていた。「あの詩について、どう思われますか?」——彼が愛したのは、セラフィーナが語る言葉ではなく、手紙の向こうにいた本当の「L」。王国中で愛される匿名詩人「月の語り部」としての才能、そして真実の文通相手の正体。絡み合う想いが解けたとき、七年分の恋がようやく本当の相手へと届く。偽りの中で紡がれた純粋な愛の物語。