あらすじ
王都立図書館で働く司書レナは、蔵書三十万冊を迷わせず動かす分類体系を作り上げた、無名の実務家。
その名を覚えている人間はほとんどいない。けれど本が正しい場所へ戻るなら、それで十分だと思っていた。
ある朝、開館前の図書館で出会ったのは——
自分の著書を読んで泣いている、奇妙な男だった。
王国魔法学者アル。
感情を研究する天才でありながら、なぜかレナの仕事に異様な執着を見せ、さらには「君の助手になりたい」と言い出して……?
毎日図書館へ通い、同じ頁に栞を残し、名前のつかない感情ばかりを増やしていくアル。
やがて彼は気づく。
どの感情にも分類できない、たったひとつの例外に。
そしてレナもまた、規則と秩序で整えてきた日常が、たった一人の存在で揺らぎ始めていることに気づいてしまう。
これは、
感情を研究する天才が、ただひとつ定義できなかった想いと、
それに巻き込まれていく司書の、静かで不器用な恋の物語。