あらすじ

その朝、世界から述語が消えた。  喪失感を抱えた詩人の男が述語なき世界を歩く。  そこは、意味の血の気が失われ、あらゆる動作が凍結された、静かなる名詞の砂漠。  胸に「母」の名札をつけ、ただ石床のシミを見つめ続ける老女。  白紙の履歴書を抱え、書けなかった小説の原稿用紙に縋って号泣する「就活生」。  結露した窓に本のページを貼りつけ、名詞の星座を描いて閉じこもる「読書家」。  剥がれ落ちた名札を付け替え、記号としての殴り合う四人の黒人女性。  そして、死の淵で「母音」を響かせ、凍りついた世界に言葉を密輸しようとする老いた司書。 「わたしはあなたになりたかった」  男の手元に残された、たった一行の「述語」が書かれた紙片。  その主を探す旅の果てに、男は言葉が暴力になる瞬間と、それでも誰かの「あいだ」に触れようとする祈りを知る。  これは、定義されることを拒み、もう一度「人間」になるための、再生の物語。

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カクヨム
カクヨム2026/03/19
  • 現在の作品述語は眠る