あらすじ

嗅覚を失った。色覚を失った。味覚を失った。左手の感覚を失った。 それでも俺は、お前の喉に魔力を注ぎ込む。 かつて宮廷結晶師として、数万の人間を魔力資源へと変換し国家を支えた男、ゼノ。 彼は人間を「座標」と「数値」で処理する冷徹な演算者だった。だが、ある村を消去した際に一枚の「子供の絵」を目にしたことで計算が狂い、すべてを捨てて出奔する。 数年後。廃都の路地裏でゼノが拾ったのは、教会の刻印を持つ声なき少女、フィオ。 ゼノは彼女を「素材」として扱い、失われた声を取り戻すための禁忌の実験を開始する。 フィオが一音取り戻すたびに、ゼノは嗅覚を失い、色覚を失い、感覚を失っていく。 だが、旅の果てに明らかになる真実があった。 自分が声を取り戻そうとしているこの少女こそが、自分が地図の上で指先一つで消し去った廃村『シュタイン』の、唯一の生き残りだったのだ。 許しを求めない。贖罪も求めない。 ただ、知ってしまった。 石になっていく元天才結晶師と、男の欠落を一心不乱に「絵」として記録し続ける声なき少女。 これは、許されることを諦めた男と、すべてを記録すると決めた少女が、廃墟の上に並んで立つまでの物語。

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カクヨム
カクヨム2026/02/26
  • 現在の作品俺の五感を削って、お前の声を取り戻す〜石になる結晶師と、声なき少女の逃避行〜