あらすじ
変化し続ける迷宮「フォルス迷宮」——その入口に座り、空気の流れと石の肌理を読むだけで、行ったことのない深層まで正確な地図を描く女がいた。
王宮地図師イレーネ・ヴィルト。十年間、誰にも注目されず、ただ正確な線を引き続けた。
ある夜、婚約者の騎士団副団長ヴェルナーに「地味すぎる」と告げられ、婚約を解消される。
イレーネは静かに王宮を去り、辺境の村で子供たちに地図の読み方を教え始めた。
だが、イレーネがいなくなった迷宮では、人が帰れなくなり始めていた——。
地味で正確な仕事が、どれだけの命を支えていたのか。
これは、誰にも気づかれなかった職人が、自分の価値を知る物語。