あらすじ
「――私は決めているんですよ。例え数百、数千の歳月が過ぎようとも必ず見つけて守ると」
大陸全土を支配する『聖教』の加護の下、繁栄を享受するアステリア王国。
十七歳にして王宮魔術師の座に昇り詰めた天才、サラは、教会の教えこそが正義だと信じて疑わなかった。
ある日、彼女に下されたのは「世界の理を乱す大罪人」の捕縛任務。
人跡未踏の封印地で待ち構えていたのは、漆黒のローブに身を包んだ、穏やかな微笑みを湛える青年・ファルだった。
サラが放つ蒼銀の極大魔術。しかし、ファルが指先で空をなぞるだけで、あらゆる術式は霧散し、事象は書き換えられていく。
圧倒的な力の差に絶望するサラ。だが、彼女を殺すはずの「罪人」が口にしたのは、魂を揺さぶる不可解な約束だった。
なぜ、初対面の彼の言葉に、これほど心が疼くのか。
なぜ、記憶にないはずの言葉に、勝手に涙が溢れるのか。
「かつて、龍の怒りで滅びた」とされる帝国の真実。
「聖なる魔法」の裏に隠された、残酷な搾取の構造。
そして、サラの瞳と同じ色をしていたという、千年前の聖女の面影――。
信じていた世界が音を立てて崩れ去る中、サラは蒼銀の杖を教会へと向け直す。
すべてを奪われ「理」として生きる男と共に、偽りの世界を敵に回す反逆の旅が始まる。