あらすじ

王宮の回廊に、三百年ほど住み着いている精霊がいる。 壁に宿り、動けず、喋れず、ただ見ている。 その壁の前を、毎日一人の令嬢が通る。 冷血と噂される公爵令嬢。 彼女は誰の前でも涙を見せない。 けれど深夜、人気のない回廊で。 壁に額を押し当てて、声を殺して泣く。 それを知っているのは、壁だけだ。 壁はもう一つ知っている。 毎晩、壁の反対側に背中を預ける騎士がいる。 灯りが消えるまで動かず、何も言わず立っている。 それを五年間、繰り返している。 令嬢は壁のこちら側で泣き、騎士は向こう側で立つ。 たった一枚の壁を挟んで、互いを知らないまま。 ある夜、王太子が婚約破棄を宣告した。 壁はその裏で交わされた密会も、讒言も、全て聞いていた。 壁は喋れない。 けれど全てを見ていた。 この夜、壁の前で何が起きるのか。 三百年動かなかった精霊が、初めて震える。

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小説を読もう2026/02/26
  • 現在の作品婚約破棄の現場を目撃した「壁」です。〜王宮の壁に宿った精霊として三百年、今日ほど人間が面白かった日はありません〜