あらすじ
数字が合わないと報告しただけで、すべてを失った。
元伯爵令嬢セレナは辺境の町で石鹸工房を営んでいる。 前世の知識を頼りに、記録をつけ、嘘のない品質を積み上げてきた。 もう誰にも期待しない。自分の手だけで、自分の居場所を守る。
毎週木曜に来る寡黙な常連客がいる。 名前はカイ。姓は名乗らない。 壊れた蝶番を黙って直し、何も求めずに帰っていく。
ある日、王宮から召還命令が届く。 三年前に自分を切り捨てた側が、今度は技術を求めてきた。
使者が町に入った日から、カイは来なくなった。
あの人は何を隠しているのか。 そして王宮に残してきた帳簿の数字は、まだ眠ったままなのか。