あらすじ
大正という時代、光と影が激しく交錯する日本橋の路地裏に、一風変わった建具師がいた。
男の名は、佐一。
彼は腕利きの職人でありながら、幸運が舞い込めば自ら財布を川へ投げ捨て、大仕事が決まればわざと顔に青痣を作って帰宅する。「吉凶は等量である」という奇妙な信念に取り憑かれた男だった。
そんな彼に訪れた、一生を安泰にするはずの「帝都一の巨大な幸運」。
佐一はその輝きに、かつてないほど巨大な「死の影」を予感し、戦慄する。
そして訪れた、大正十二年九月一日。
大地が鳴動し、帝都が炎の海と化すなか、佐一は愛する妻を守るため、積み上げた全財産を投げ打つという究極の「賭け」に出る。
すべてを捨てた男が、灰の中から見出した本当の幸福とは何か?