あらすじ
二〇〇〇年、冬。
派手なギャルを装い、無敵の自分を演じる成瀬 日向(なるせ ひな)は、下駄箱で一通の封筒を拾う。
それは隣の枠の「光」のような少年・久瀬宛ての、宛先違いの手紙だった。
差出人は、清楚な令嬢として知られる五十嵐 澪(いがらし みお)。
だが、封を切った日向の目に飛び込んできたのは、甘い告白などではなく、氷のように冷徹な「絶縁状」だった。
「――この言葉は、あいつには届かないよ」
日向はふとした好奇心から、その手紙に「赤字」を入れる。
ルーズソックスの内側に孤独を隠すギャルと、完璧な微笑みの下で牙を研ぐ令嬢。
手紙という密室で、二人はお互いの「擬態」を脱ぎ捨て、誰にも見せない本当の言葉を共有していく。
下駄箱を介して交わされる、秘密の添削。
MDから漏れる孤独なアンビエント。
間違いから始まった二人の対話は、卒業の季節を前に、静かに、けれど激しく揺れ動き始める。
これは、不自由な時代の中で、自分の居場所を探し続けた二人の少女の記録。
かつて、淡綴(あわつづり)名義で投稿したものを再構成した作品です。