あらすじ

須賀誠一、三十四歳。文具メーカーの営業マンで、夜はTwitchでVALORANTを配信する小規模ストリーマー。使用エージェントはサイファー。カメラで敵を捕捉するように、彼は日常の言葉を監視し続けている。 「普通に上手いっすね」——配信中に流れたコメントの三文字に、彼は引っかかった。 褒め言葉に「普通に」をつけるな。天井をつけるな。言葉はタダじゃない。 高校時代の映像作品を「普通にすごいじゃん」と評されて以来、十七年。その嫌悪は配信の「日本語警察タイム」として芸になり、やがてリスナーとの距離を壊し、同僚との間に罅を入れ、好意を抱いた女性の言葉を不自由にしていく。 元国語教師の母は言った。「みんな、十七音みたいなものなの。足りない言葉で、一生懸命伝えようとしてるの」 門前仲町の焼き鳥屋、毎朝のドトール、手間をかけた角煮。言葉と味と生活を丁寧に積み上げてきた男が、自分自身の口から出たたった六文字で、すべての前提を失う。 正しさの果てにあるものを描く、言葉をめぐる五章の物語。

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カクヨム
カクヨム2026/02/25
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