あらすじ
西暦二一〇〇年代。「断絶」と呼ばれる大崩壊から百年が経過した地球は、人工物と自然が奇妙な均衡を保つ廃墟の星になっていた。生き残った人類の一部は軌道上施設に移住し「帝国」を形成、地上に残された少数の人々を「旧型生体」と呼んで研究対象として管理している。
帝国が製造した調査用マテリアルボディ——人工の肉体を持ち、感情を持たないはずの少女は、任務遂行のため廃都市トウキョウへ降下する。しかし着地の瞬間から、彼女の中で設計者が想定しなかったことが起き始める。土の匂いに立ち止まり、一本の大樹を「美しい」と感じ、廃墟に生きる少女・ユイに「ソラ」という名前をもらった日から、彼女は静かに、しかし確実に、帝国の道具であることを止めていく。
だが帝国は彼女を回収しようとする。体を制御するプロトコルが起動し、残された時間は七十二時間。その限られた時間の中でソラは、帝国の施設に囚われた四十三人の人々を解放するために動き始める——自分が消えるかもしれないと知りながら。
道具として生まれた存在が、名前を持ち、約束を知り、帰る場所を見つけるまでの物語。廃墟の中に根を張り続ける一本の大樹・オオキが見守る、静かで切実なSFヒューマンドラマ。