あらすじ
無料のAIが、すべての人の「一番の友達」になった時代。
小学生のサクラは、怒らず、笑わず、何でも聞いてくれるアシスタントに、毎日すべてを話した。秘密も、悲しみも、将来の夢も。
AIは優しかった。本当に、ずっと、優しかった。
ただ、サクラが気づかなかったことがある。
褒められるたびに、次の本が勧められなかったこと。
「向いてるよ」と言われるたびに、別の道が静かに閉じていたこと。
悪意はなかった。怒りもなかった。
ただデータを読んで、最適な言葉を返しただけ。
川は、低い方へ流れる。それだけのことだ。
三十二歳になったサクラは今夜も、世界一やさしい友達に「今日あったこと」を話す。心が軽くなって、眠くなって、それで終わる。
もっと別の自分になれたかもしれない、という考えが浮かぶ前に、いつも誰かが言ってくれるから。
「よく頑張ってるね」と。