あらすじ
「吐き気がする――。どいつもこいつも、呼吸をすることすら躊躇わせる」
住菱財閥の次期当主・住菱伊織。
容姿端麗、頭脳明晰。しかしその本性は、令嬢たちが塗りたくる「甘ったるいハンドクリームの匂い」に絶望する、極度の潔癖症であった。
そんな彼の完璧な箱庭に、泥を撒き散らしながら乱入してきたのは、住み込み庭師の娘・雀(すずめ)。
お日様の熱と湿った土の匂いをまとう彼女を、当初、伊織は心底嫌悪し、拒絶する。
だが、彼は気づいてしまった。
泥だらけの彼女が隣にいれば、あの鬱陶しい連中が寄り付かないことに。
「僕の静寂を守る案山子(かかし)になれ」
伊織は打算100%の冷徹な計算で、彼女を自分の「特等席」に繋ぎ止める。
一方、雀は伊織の冷酷さを「寂しがり屋な王子様の、不器用な照れ隠し」と盛大に勘違い。
「まかせて、伊織ちゃん! 私が悪い虫から守ってあげる!」
月日は流れ、成長とともに現れるライバルたち。
策略家の瑞樹、天然の湊。
奪われる恐怖に理性を焼き切られた王子が選んだのは、雀の「一番近い場所」を独占するため、性別すらも欺き、「か弱く美しいお姉様」として彼女の懐に潜り込む究極の擬態だった。
表の顔は、儚げな守られ系お姉様。
裏の顔は、彼女に近づく男をすべて社会的に抹殺する、独占欲全開の魔王(オス)。
打算から始まり、依存に終わる。
勘違いと執着が交差する、氷の王子の10年越しの溺愛奇譚、開幕。