あらすじ
「やめろ! もう食えない!」
目の前で婚約者のステイカスカーが皿をひっくり返した。床に散らばったのは数日かけて開発した特製スープ。何度目だろう。
「ヘネロープ! お前の料理はいつまで経っても毒の味だ! 舌が痺れて頭がおかしくなりそうだ!ふざけるな!」
ステイカスカーは顔を真っ青にして叫んだ。伯爵家の長女であるヘネロープは地味な見た目のせいで、常に華やかな妹フヒオナと比較されてきた。
しかし、本当の問題は味覚にある。味覚は敏感すぎるのだ。
普通の人には感じられない微量のミネラル、隠し味のスパイス、食材の鮮度による化学変化まですべてが脳内で数値化され把握できる。
だから、世間一般で美味しいとされる料理は雑味が多すぎる。構造が複雑で不快なノイズでしかなかった。
「お姉様、いい加減にして。ステイカスカー様が可哀想よ」
妹のフヒオナはステイカスカーに寄り添い、甘えた声を出した、