あらすじ
魔法もない、チートもない。転生者なんて存在しない。顕微鏡さえもない18世紀相当の世界。
グレンデール地方を襲う「山の神の呪い」――それは、夏が来ると人々の間に広がる、一度下がった熱が数日後に再発し、全身から出血して死に至る恐怖の疫病だった。
「呪いと戦うんじゃない。俺が知りたいのは、敵の正体だ」
野山で獲物の足跡を追う熟練スカウトのアルフレッド。
古い医術の限界を感じ、冷徹に症状を記録し続ける薬師カメリア。
そして、神への祈りよりもアバカス(計算板)を弾く時間を愛する変人修道士ブルーノ。
三人の武器は、剣でも魔法でもない。
バラバラな報告を整理する「情報の標準化(SOAP)」。
権威ある医師の経験を数字で切り伏せる「根拠に基づく医療(EBM)」。
そして、命を天秤にかける冷徹な「無作為化比較試験(RCT)」。
これは、不屈の観察眼と統計学という最強の武器を手に、目に見えない「死神」と戦った三人の賢者の物語。
「公衆衛生が成功したとき、そこには『何も起きない』という最高の幸せがある」
科学がまだ夜明け前にあった時代。
知性の剣で未来を切り拓いた、本格医療統計ファンタジー、登場。