あらすじ

あらすじ 中洲の裏通りに、23時59分になるとだけ現れる、不思議な店がある。 人はそれを「かえれる店」と呼ぶ。 けれどその店は、過去に戻るための場所ではない。 そこに入れるのは、後悔や喪失を抱えたまま、前に進めなくなってしまった人だけだ。 店の中で人々が出会うのは、亡くなった家族、すれ違ってしまった大切な人、守れなかった約束、言えなかった言葉、仕事に埋めて逃げてきた時間、胸の奥に閉じ込めた想い―― そして、そのすべてが分かれてしまった「選ばなかった未来」の光景だった。 店に入る前に、必ず告げられる言葉がある。 「ひとつだけだよ。ちゃんと、置いていける?」 棚に並ぶ小さな箱や瓶、写真立てや手帳は、 それぞれの人が抱え続けてきた後悔の“形”そのものだった。 彼らは悩み、恐れながらも、思い出や愛そのものではなく、 自分を縛りつけていた後悔の形だけを、静かに棚へ戻していく。 そして00時00分。 店は消え、路地にはシャッターだけが残る。 ポケットには、小さなスプーン、キーホルダー、鍵、折り紙、指輪―― 大切だった証だけが、そっと残る。 人々は、過去を忘れたわけではない。 ただ、「前に進めなくしていた後悔の持ち方」を置いてきただけだった。 物語の最後に明かされるのは、 いつも店の前で声をかけていた“影”の正体。 彼女もまた、かつて母を亡くし、 自分を責め続ける後悔から抜け出せずにいたひとりだった。 そして、自分の後悔を置いてきたことで、 今は「前に進めない人」を見送る側として、あの場所に立っている。 この物語は、過去に帰るための物語ではない。 後悔を消す物語でもない。 後悔を抱えたままでも、生きるほうへ戻っていける―― そのことを、静かに手渡す連作短編である。

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小説を読もう2026/02/24
  • 現在の作品かえれる店 ― 後悔の置き場所 ―