あらすじ

排他的な再開発都市の片隅で、 少年と少女は番号で呼ばれながら働いている。 危険な現場、削られる賃金、 いなくなってもすぐ埋まる空白。 それでも二人は、小さな約束を持っていた。 いつか郊外に部屋を借り、 白いカーテンのある窓辺で名前を呼び合うこと。 少女は解体現場で拾った硝子片を宝物にする。 花弁の形をした透明な破片。 光にかざすと、かすかに赤く滲む。 それは、割れる前から傷を抱えた硝子。 ある日、工程の圧縮により二人は高所作業へ回される。 風の強い足場の上、揺れる資材。 ほんの小さな軋みが、すべてを崩す。 事故は一瞬で終わる。 ニュースにもならない。 名簿の数字が二つ入れ替わるだけ。 遠くの高層ビルは完成し、 白いカーテンが整然と並ぶ。 硝子は今日も光っている。 二人の夢も、体温も、 都市のどこにも残らない。 ただ、あの硝子片だけが、 乾いた赤を縁に残したまま、 誰にも拾われずに落ちている。

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小説を読もう2026/02/24
  • 現在の作品血い硝子