あらすじ
排他的な再開発都市の片隅で、
少年と少女は番号で呼ばれながら働いている。
危険な現場、削られる賃金、
いなくなってもすぐ埋まる空白。
それでも二人は、小さな約束を持っていた。
いつか郊外に部屋を借り、
白いカーテンのある窓辺で名前を呼び合うこと。
少女は解体現場で拾った硝子片を宝物にする。
花弁の形をした透明な破片。
光にかざすと、かすかに赤く滲む。
それは、割れる前から傷を抱えた硝子。
ある日、工程の圧縮により二人は高所作業へ回される。
風の強い足場の上、揺れる資材。
ほんの小さな軋みが、すべてを崩す。
事故は一瞬で終わる。
ニュースにもならない。
名簿の数字が二つ入れ替わるだけ。
遠くの高層ビルは完成し、
白いカーテンが整然と並ぶ。
硝子は今日も光っている。
二人の夢も、体温も、
都市のどこにも残らない。
ただ、あの硝子片だけが、
乾いた赤を縁に残したまま、
誰にも拾われずに落ちている。