あらすじ
【著:神崎 凪】
VRMMO『クロノス・クレイドル』。そこには、僕の理想の居場所があった。頼れる父のようなギルド長、優しく導いてくれるお姉さん、背中を預けられる寡黙な相棒、そして守るべき少女。僕たちは完璧なパーティで、完璧な「家族」ごっこをしていた。
――お互いの正体など、知る由もなく。
現実(リアル)の僕は、学校に居場所のない「空気」のような高校生。理想の父親役は、現実で娘を捨て、愛人と逃げた男。優しいお姉さんは、その男と不倫関係にある疲れ切ったOL。そして僕が守っていた少女は、父親に捨てられ、学校でいじめられている「背景」のような女子高生だった。
美しいVRの皮が剥がれ、正体が露呈したとき、そこに残ったのは、目を背けたくなるほど醜い人間関係の「淀み」だった。
世界は残酷で、不平等で、意地が悪い。 救いなんてどこにもないように見える。
それでも、泥だらけの手を取り合う人がいれば、私たちは息ができる。
これは、綺麗な嘘(VR)を捨てて、汚れた現実を「自分の足」で歩き出すまでの物語。