あらすじ
「誰もいない部室が欲しかっただけなのに」
|真白《ましろ》|陸《りく》が部活に求めるものは三つ。
静かであること。人がいないこと。そして誰にも邪魔されないこと。
中学時代、友人を助けようとして声を上げ、かえって状況を悪化させた経験から、陸は自分の言葉に自信を持てなくなっていた。余計なことは言わない。それが、陸なりの処世術だった。
高校二年の春。廃部寸前の放送部に、静かな居場所を見つけた――はずだった。
翌日、放送室の扉を開けると、見知らぬ女子生徒が座っていた。
|音羽《おとわ》|澪《みお》。人前で話すことが怖い、転校生。
顧問から突きつけられた条件は「月に一回、校内放送をすること」。
部室を失いたくない二人は、渋々マイクの前に座る。
だけど不思議なことに、この放送室でだけは声が自然に出てくる。
「真白くんの声、聴いていて安心します」
そう言った彼女の声が、いつもより少しだけ高かったことに、俺はまだ気づかないふりをしていた。
声に自信を失った少年と、人前で話せない少女が始めた二人だけの校内ラジオ「|放課後《ほうかご》の|二人言《ふたりごと》」。
誰も聴いていないはずだった放送は、いつの間にか学校中に届き始めて――。
声が怖かった僕らは、放送室で声を取り戻す。
互いの声に救われながら、少しずつ距離を縮めていく青春ラブコメ。