あらすじ
「君は最近、疲れているんじゃないか?」
営業本部長であり、かつての恋人でもあった男は、そう言って私の記憶を修正し始めた。
契約単価の改定。
議事録の承認。
予算会議の発言。
気づけば、すべてが“私の承認”になっていた。
「数字は作るものなんだよ」
「君は少し記憶が曖昧だ」
優しい声で、私は壊されていく。
産業医面談。
適応障害の疑い。
内部監査室への左遷。
自分が間違っているのかもしれないと、何度も思った。
――それでも、私は保存していた。
改ざんされる前の、原本のログを。
株主総会当日。
営業利益120%達成の拍手が鳴り止んだ瞬間。
私は立ち上がる。
これは復讐ではない。
一足す一が、二だったと証明するだけの話。
優しさで壊され、記録で立ち上がる。
静かな公開断罪の物語。