あらすじ
三百人が座れる大教室の、最後列の端っこ。
私の隣には、毎回必ず同じ男が座る。
目も合わせない。名前も知らない。話しかけられたこともない。
ただ隣に座って、同じ講義を受けて、無言で帰っていくだけ。
なのに、彼が休んだ日は、教室の温度が2度下がる気がした。
彼は私の「沈黙のバリケード」。
彼がいれば世界が静かになる——ただそれだけの、心地いい関係のはずだった。
でも、私はまだ知らない。
私が無意識にこぼした「独り言」が、言葉を失った彼を救っていたことを。
そして、彼が最初に私の隣に座った理由は、「私」じゃなかったことを。
これは、無口な彼と独り言の多い私が、不器用に言葉を取り戻していくまでの、苦くて温かい恋の話。