あらすじ

「あなたの気持ちは、橙にもなれない、薄橙(うすだいだい)みたいね」 最愛の彼女にそう告げられ、中途半端な喪失感を抱えたフリーライターの「彼」は、携帯の電波も届かない隠れ里「白灰村」を訪れる。 職業的習性から、胸の空洞を埋めるように静寂を録音し始める彼だったが、ICレコーダーには現実には存在しないはずの音が記録されていた。 ――じょり、じょり。濡れた布を、ハサミで断ち切るような音。 「いい色だ。薄橙の、一番いい時期だ。……はらわなあかん」 老婆の言葉とともに、彼の顔は自身の重みに耐えかねて「ずり落ち」始める。 鏡に映るのは、目鼻立ちを失い、桃色の筋肉を晒した「かつて私だったもの」。 個の苦しみから逃れるための、残酷な救済。 剥がされた顔が、数千の絶望と縫い合わされ、巨大な「主」の一部と化すとき。 レコーダーに刻まれた「彼女に似た声」の正体とは。 色彩の叙情と、生理的嫌悪が交差する民俗学ホラー。 今夜、あなたの「顔」は繋がっていますか?

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カクヨム
カクヨム2026/02/22
  • 現在の作品白灰(はくかい)村録音遺稿