あらすじ
多次元の結節点”ノーウェア”。
天を衝く多次元危機管理庁『MCA』が世界の平穏を謳う影で、汚泥のような裏仕事を一手に引き受ける「掃除屋」の男がいた。
灰原熾祈(ハイバラ・シキ)。
銀髪に返り血を浴び、誰とも交わらず、ただ独りで世界の綻びを”処理”する。かつての恋人に「付き合わなければよかった」と拒絶された過去を持つ彼は、もう二度と誰も愛さないと決めていた。
そんな彼の唯一の安らぎは、金曜日の夜、バー『サイドテイル』の片隅で独りウイスキーを啜ること。
だが、その平穏は、次元消滅ですべてを失った元名家令嬢・九条怜奈(くじょう れいな)によって破られる。
アングラな店で商品として扱われながらも、誇り高く、その美貌で男たちを跪かせてきた怜奈。しかし、熾祈だけは自分を一瞥もしない。
「向こうへ行け。酒が不味くなる」――完膚なきまでの拒絶が、彼女の女としての意地と、渇いた魂に火をつけた。
「あなたが私に縋って泣くまで、私は絶対に諦めないから」
世界の破滅を阻む壮大な任務の裏側で、執着に燃える令嬢と、鉄壁の無関心を貫く掃除屋がグラスを挟んで対峙する。
これは、孤独を愛する男と全てを失った女が、狂い始めた金曜日の夜に”魂の救済”を奪い合う、ハードボイルド・ラブストーリー。