あらすじ
倒れた私を抱き上げたたくましい腕は、
初めて触れたはずなのに、
「もう大丈夫だ。」
その声を聞いた瞬間
胸の奥がきゅっと痛む
言葉にならない寂しさが一気に押し寄せる
病室で男性看護師さんが血圧計を持ってきた
先生は静かに、でも絶対に譲らない
「触らなくていい。……俺が診る」
その“彼女は俺が”の響きが、
胸の奥に深く沈んでいく。
私の手首を包む指は、
医者の冷静さとは違う、
触れられるたび
心臓が、千年前の記憶を思い出そうとする。
点滴の針がズレたとき、
先生は誰よりも早く駆けつけてきた。
「痛かったな……ごめん」
どうして謝るの。そんな顔をするの。
私が傷つくたびに自分も傷つくみたい
表情が、胸に刺さる。
体調が悪いときは、
呼んでいないのに、息を切らして飛んでくる。
「苦しいなら、俺を呼べ。……」
着替えているときに限って回診に来るのも、
偶然じゃないと気づいてしまう。
「……見られたくないなら、言えよ」
停電の夜。
懐中電灯ひとつだけの暗闇で、
先生の声だけがやけに近かった。
「怖くない?」
首を振ると、
そっと私の手を包んでくれた。
「……よかった。
どうしてそんなこと言うの
暗闇の中で、
先生の指先が私の頬に触れた瞬間、
涙がこぼれそうになった。
理由なんてわからない。
胸が苦しいほど恋しい
「心音、聞かせろ」
唇にそっと指を当てられ、
シー、と囁かれる。
聴診器が胸に触れた瞬間、
先生の顔が近すぎて、
息が触れそうで。
「……速いな。」
そんなふうに言わないで。
腕を握られたときも。
「細い……なあ」
その言葉の意味を、
私はまだ知らない。
でも、胸の奥が痛む。
懐かしい痛み。
まるで千年前、
誰かと別れた記憶が蘇る
どうしてこんなに優しいの。
どうしてこんなに切ない目で私を見るの。
どうして、私だけ
その理由を、私はまだ知らなかった
千年前愛を誓い、
私を失い永遠の命を捨てた帝の魂が、
この人の中でずっと私を愛していたなんて。