あらすじ
三百年前。
争いを嫌う一人の転生者が、魔王の子として産まれた。
後に“沈黙の魔王”と呼ばれる男である。
彼は二百年にわたり魔族領を発展させ、人族へ侵略することもなかった。
だが百年前───
ヒューマン族は彼を「悪」と断じ、諸国連合軍を率いて討伐に乗り出す。
魔王は守るために戦った。
滅ぼさぬよう、抑えながら。
だがその甘さが、最愛の仲間の死を招く。
怒りに染まった魔王は討伐軍を壊滅。
そして世界に刻んだ。
種族と種族の間に、
国と国の間に、
決して容易には越えられない“見えない境界線”を。
それから百年。
世界は均衡を保っている。
魔王は、手を出さなければ何もしない。
だがヒューマン族だけは違った。
彼らは魔王を虐殺者と呼び、復讐を誓う。
そして切った最後の札──勇者。
選ばれた勇者もまた、転生者だった。
再び動き出す世界。
越えられぬはずの境界。
それでも、戦火の匂いは確かに広がっていく。
そんな中。
剣も魔法も持たない、ただの村娘がいた。
レナ。
魔王も勇者も知らない。
世界の裏側も知らない。
──だがある日、彼女の目に“線”が視えるようになる。
国境。縄張り。敵意。恐怖。
人と人の間に引かれた、無数の境界。
それは壁であり、秩序であり、呪いだった。
境界を引いた魔王。
それを越えようとする勇者。
そのどちらでもない、
線だけが視える少女。
世界が再び割れようとする今
レナは、どちらの側に立つのか。
それとも──