あらすじ

舞台は古代王朝・殷。 世界線の歪みを修正する調整員・縫季は、崩壊へ向かう運命を持つ王太子・帝辛の世界線へ送り込まれる。灯台が命じた任務はただ一つ。歪みの原因を断ち、帝辛が“本来の軌道”で滅びるよう最小限の修正を施すこと。救うためではない。壊れ方が変質すれば、被害は広がる。 縫季はすでに帝辛の末路を知っていた。幽閉され、涙を流し、一人で朽ちていく姿を、別の世界線で観測している。だから怖いものなどないはずだった。 だが実際に出会った帝辛は、縫季の想定を静かに壊す。民に向ける柔らかな笑顔。茶を淹れる時、指先で湯の温度を確かめる几帳面な仕草。そして幼馴染の清朗と笑い合う声。 歪みの正体は、清朗と帝辛の間にある愛情だった。深すぎる信頼が帝辛の孤独を先に救い、滅びの軌道をズラしている。悪意はどこにもない。善意が、最も静かに人を壊す。 清朗も帝辛も間違っていない。それでも縫季は切らなければならない。 「間違ってないものを、切れる者が必要だった」そう灯台は言った。だから縫季が選ばれた。 任務は遂行される。歪みは縫い直され、帝辛の滅びは予定通りに戻っていく。 そして縫季は、帝辛が笑える世界線を探すために、何度でも世界を越える。 救えない。 それでも俺は、あの笑みへ道を紡ぐ。

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小説を読もう2026/02/23
  • 現在の作品君の笑みへと紡ぐ