あらすじ
歌えなくなった。
それだけで、世界の音が遠くなった。
元バンドボーカルの湊は、
もう人前で声を出さないと決めていた。
そんな彼に、ある日声をかけてきた少女。
「ねえ、君の声、貸してくれない?」
彼女の名前は澪。
風の音や街のざわめきを録音して、
“消えない音”を集めている。
明るくて、まっすぐで、少し変わっていて。
そして彼女は、誰にも言わず病気を抱えていた。
「消えるかもしれないなら、残せばいいじゃん」
澪の言葉に押され、
二人は“声と風を集める音楽プロジェクト”を始める。
波の音。
強い風のうなり。
笑い声。
沈黙。
重ねていく音の中で、
止まっていた湊の時間が少しずつ動き出す。
ぶつかって、笑って、遠回りして。
気づけば、隣にいるのが当たり前になっていた。
だけど時間は、待ってくれない。
未来をあきらめない少女と、
過去に縛られた少年。
二人が作る最後の一曲は、
きっと――
忘れられない。
青春は、
眩しくて、痛くて、騒がしくて、
そして二度と戻らない。
それでも。
この声は、きっと消えない。