あらすじ
「お前の学力なら、二次募集はここしかねえ」
バブル崩壊の足音が微かに聞こえ始めた平成3年、春。進学校の受験に失敗し、人生が終わったような顔をしていた**佐藤拓海(さとう たくみ)**は、担任の勧めで「北海道旭川農業高校」へと流れ着く。
かつての同級生たちがローファーを履いて街を歩く中、拓海を待っていたのは、重たいゴム長靴と、容赦ない牛の鼻息、そして広大すぎる十勝岳連峰の景色だった。
数学の公式の代わりに「堆肥の配合」を叩き込まれ、英単語の代わりに「家畜の去勢」を学ぶ日々。最初は「こんなはずじゃなかった」と腐っていた拓海だったが、実家が農家で豪快な性格の源(げん)や、動物の心は読めるが人の心は読めないちひろといった、癖の強すぎる仲間たちと過ごすうちに、尖っていた心は次第に丸くなっていく。
「焦るなよ、土の下じゃあ、みんなゆっくり育つんだから」
ポケベルが鳴り響き、放課後の売店で「カツゲン」を飲み干す、ゆるやかな3年間。これは、エリートコースから脱落した少年が、旭川の厳しい冬を越え、自分なりの「実り」を見つけるまでの、泥んこ青春グラフィティ。