あらすじ
目を開けると、そこは見知らぬ森だった。
二十七歳の引きこもりである俺、透(とおる)は、唯一の楽しみであるVRMMO『エターナル・ワールド・オンライン』にログインしたまま、現実で眠りについてしまったらしい。
目を覚ました先は、ゲームの世界によく似ているけれど、どこか違う。システム音は聞こえず、空気の匂いまでリアルだ。そして何より、目の前にいるのは、自分が長年育ててきた美少女アバター、ユイだった。
「……起きた?」
ユイが、優しい声で話しかけてくる。NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)のはずの彼女は、確かに“そこ”に存在し、俺の名前を呼んだ。
混乱する透だったが、ゲームのログアウトボタンは消え、現実に戻る方法は見つからない。仕方なく、彼女と共にこの世界を旅することになる。
ユイは驚くほど人間らしく、時に微笑み、時に怒り、そして透の心を、そっと揺さぶる。ゲームの中のデータのはずなのに、彼女の一挙手一投足が、透にとっては現実のもの以上に鮮やかだった。
しかし、そんな二人の旅に、ある“違和感”が影を落とし始める。
ユイが、透の知らないはずの“現実”の知識を持っていることに、気づいてしまったからだ。
――お前は、一体、誰なんだ?
スクリーンの向こうで恋をしたその相手は、もしかしたら、もっと遠くて、もっと近い、知らない誰かなのかもしれない。
これは、世界で一番孤独だった男が、たった一人の“君”と出会う、愛おしい物語。