あらすじ
霧深い山間にひっそりと息づく忍びの里。
そこには、千年にわたり咲き続ける秘花――**久遠華《くおんか》**が眠っている。
その花は、命を延ばし、国をも揺るがす力を秘めるという。
十五年前、鷲尾藩の密命を受けた忍び・斎《いつき》は、花を奪うため里へ侵入する。
しかし彼は、里の守り手であった燈と出会い、命令と想いのあいだで選べぬまま姿を消した。
そして現在――
鷲尾藩は再び久遠華を狙い、刺客・乱堂を差し向ける。
里を守る少女・灯《あかり》は、襲撃の中で己の出生と父の罪を知る。
命令に従うか。
自ら選ぶか。
交錯する過去と現在。
父と娘はそれぞれの「選び」によって刃を振るう。
乱堂との死闘の果て、里に夜明けが訪れる。
だが、鷲尾藩の意志は折れてはいない。
久遠華はなお咲き続ける。
それは、誰かを縛るための花ではない。
過去を裂き、未来を繋ぐための楔。
これは、命令に生きた者が「選ぶ」ことを知り、
少女が“自らの名で未来を掴む”までの物語。
そして――
まだ蕾は、閉じたままだ。