あらすじ
『春、わたしはわたしを始める』
桜が咲くより少し前
まだ冷たい風の中で
わたしは鏡に向かって立っていた
昨日までのわたしは
声が小さくて
教室の隅がよく似合った
でも
今日のわたしは
まだ完成していないけれど
少しだけ、目がまっすぐだ
新しいリップの色は
勇気の味がした
慣れない前髪は
未来を隠しきれなかった
笑顔をつくるのは
少しぎこちない
でも
笑おうとする気持ちは
ちゃんと本物だ
「変わりたい」って
たぶん
いちばん正直な願い
誰かになるんじゃない
誰かに好かれるためだけでもない
わたしが
わたしを好きになるために
はじまりの春は
まだ不安でいっぱいだけど
怖さと一緒に
ときめきも
ちゃんとポケットに入っている
桜が舞うその下で
わたしはそっとつぶやく
今日から
わたしは
わたしを
始める。