あらすじ
看板の文字は、もう潮風で薄れ始めていた。
婚約を破棄され、国を追われた元公爵令嬢セラフィーナが港町の片隅で開いたのは、同じように婚約を壊された人たちのための小さな相談所だった。
貴族の肩書きはない。 魔法もない。 あるのは、前世で何百人もの人生に向き合った記憶だけ。
泣きながら怒鳴り込んできた元伯爵令嬢。 自分には何もないと俯く元男爵令嬢。 訳ありの大家は、なぜかいつも必要な情報を持っていて、夜になると戸口に温かい茶を置いていく。
相談者たちが少しずつ自分の力で立ち上がっていく一方で、セラフィーナの過去を探る手紙が海の向こうから届き始める。
そしてある日、相談所の扉を叩いたのは、かつて誰かの婚約を壊した側の人間だった。
捨てた者と捨てられた者が同じ場所に立った時、何が起きるのか。