あらすじ
その年の選挙戦は、かつてないほどの異様な熱気に包まれていた。いや、その熱は一過性の流行などではない。その火は消える気配を見せず、この国をゆっくりと焼き続けている。おそらく今後もずっと――。
『私を、皆さんのお姉さんにしてくださあああい!』
「おさやあああ!」「さやねええええ!」「さややーっ!」
『おれらイケメン軍団がこの国を仕切る。怖いか?』
「きゃああああ!」「こわーい!」「私を見てえええ!」
街頭演説は、もはや政策を語る場ではなかった。黄色い声が飛び交い、団扇とペンライトが振られ、歓声が幾重にも折り重なり、波のようにうねる。スマートフォンは第三の目となり、焦がすような視線を壇上へ向け続けていた。
政治家たちはついに気づいたのだ。国民が何を基準に票を投じるのかに。それは政策でも理念でもない。ただの見た目だということに。