あらすじ
男女比一対四。
男女のカップリングが物理的に困難なこの世界では、女性の約八割がパートナーを持てていない。
そして、それが原因であろう。いわゆる男女の行為は、俺の知るそれとは比較にならないほど神聖化されていた。
かつての日常にあった些細な接触――たとえば、ただの「間接キス」ですら、この世界の女にとっては死ぬまで反芻し続ける『一生モノの宝物(思い出)』になる。
男側は自分を安売りせず、女側はたった一枠の席を巡って、貞操という名の牙を剥く。そんな歪な均衡の上に、この街の平和は成り立っているらしい。
だが、そんなルールを知る由もない俺は、今日も今日とて「普通」に生活し、無自覚に干上がった彼女たちの心へ『優しさ』を振りまいてしまう。
俺が喉を潤し、何気なくテーブルに置き忘れた一本のペットボトル。
それが、隣に住む女性の心臓部に、抗いようのない『致死量の愛』を打ち込んでしまうとも知らずに。