あらすじ

都内S区に暮らす30歳のミホは、スーパーの惣菜売り場で働きながら、毎朝毎晩テレビのニュースを聞いている。 遠い紛争も、近所の火災も、画面の中では区別がない。 重いはずの出来事のあとに、軽やかな話題が差し込まれ、感情は短い時間で切り替わっていく。 違和感は、まだ言葉にならない。 夫のシンはテレビ制作会社に勤めているが、仕事の詳細を語ることはない。 ただ、彼は「番組を作っているわけではなく、編集をしているだけだ」と言う。 長さを整え、順番を変え、言い回しを調整する――それは単なる業務のはずだった。 やがて、身近な噂や出来事とニュースの内容が、静かに重なりはじめる。 それでも日常は崩れない。世界も壊れない。 これは、情報が娯楽のかたちをまとい、現実と画面の境目がゆるやかに溶けていく社会を描く物語である。 読後、ふとテレビの音に耳を澄ませたくなる、静かな風刺小説。

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カクヨム
カクヨム2026/02/21
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