あらすじ

クリスマスの夜。街はイルミネーションに包まれ、恋人たちの笑い声が響いていた。 杏奈は仕事帰りにスーパーで予約していたケーキを受け取り、鶏肉と野菜を買って帰る。 「今夜は唐揚げとサラダ、デザートはケーキ。きっと喜ぶよね、翔太」 八年続いた同棲生活――穏やかで、静かで、幸せだった。 アパートの階段を上がりながら、胸は少し高鳴っていた。けれど扉を開けた瞬間、空気が冷たく変わる。 ソファに座る翔太は、どこか硬い表情をしていた。 「ただいま。どうしたの?」 「……話がある」 嫌な予感が、背筋を走った。 「別れよう」 一瞬、世界が止まった。 冗談だと笑おうとした唇が震える。 「……なんで?」 翔太は視線を逸らし、低く告げる。 「新人の結城千絵が……俺の子を妊娠した」 胸の奥が崩れ落ちた。 「……八年も一緒にいたのに?」 「ごめん。でも責任を取らなきゃならない」 杏奈は嗚咽をこらえる。 「責任って、私との時間は? 全部なかったことにするの?」 「そういうことじゃない」 そう言いながらも、彼の声はもう遠かった。 「このアパート、出て行ってくれ。千絵と住むことにした」 耳を疑う。 心臓の音だけが響いていた。 杏奈はバッグを掴み、涙をこぼしながら外へ飛び出した。 冷たい夜風が頬を刺す。街の光が滲む。 ――どうして、私じゃだめだったの? 駅前のベンチで座り込み、スマホを握りしめる。 誰にも電話できない。帰る場所もない。 エコバッグの中では、彼の好きだった唐揚げ用の鶏肉が冷たく沈んでいた。 それでも、どこかで感じていた。 終わりは痛いけれど、まだ人生は終わっていない。 この涙の先に、きっと何かが変わる。 杏奈は顔を上げた。夜空に雪が舞い始めていた。 「……大丈夫。ここからやり直す」 八年の恋は終わった。けれど、これが新しい物語の始まりだった。

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カクヨム
カクヨム2026/02/21
  • 現在の作品8年間付き合っていた彼氏にクリスマスの夜に捨てられた宇都宮杏奈は、25歳のイケメンに助けてもらってそれからざまあして幸せを掴みます。