あらすじ
【これは英雄譚ではない。
世界が「正しいまま壊れていく過程」の記録だ。】
帝国は、合理的だった。
人命は数字として管理され、
戦争は帳簿の上で最適化され、
世界は「破綻しないように」設計されていた。
地下の記録編纂室で、その均衡を支えていたのが
主任事務官セイルである。
彼の仕事は、英雄たちの勝利を記録することではない。
勝利の裏で生じた死者、破壊、赤字を
「なかったことにせず、成立させ続ける」ことだった。
だがある日、
「三千人を救え」という小さな帳簿の歪みが、
帝国全体の計算を狂わせる。
救われる命。
その裏で、切り捨てられる別の命。
正しさは、常に合っている。
だが合っているからこそ、誰かが必ず死ぬ。
剣も魔法も、世界を救わない。
世界を終わらせるのは、
ただ一つ――正確な計算だけだ。