あらすじ
かつて“天才”と呼ばれたスケーターがいた。
プロ注目の逸材――その名は、纐纈五月(はなぶささつき)。
高校時代、夢は目前にあった。だが大怪我をきっかけに、彼の世界は静かに崩れていく。思うように身体は動かず、思うように自分を表現できない。板の上でしか息ができなかった少年は、やがて夢を手放した。
それでも生きるために社会へ出た。スーツを着て、笑って、頭を下げて。けれど現実は、彼の想像よりずっと息苦しかった。たった一年で退職。成人したばかりの彼は、無職という肩書きを手に入れる。
仕事も学校もない日々。かつての相棒――スケートボードに乗り、宛てもなく街を流しながら、五月は考える。自分は何者なのか。何のために、生きているのか。
そして、事故は唐突に訪れた。
道路に転がっていた小さな石ころを避けようとした、あの瞬間。
――次に目を開けたとき、彼の前に立っていたのは、銀髪蒼眼の女神のような美女だった。
「ようこそ。あなたは選ばれました」
だが五月は、世界を救いたいわけでも、勇者になりたいわけでもない。ましてや、ギルドマスターなんて柄じゃない。
ただもう一度――自分の“表現”を取り戻したいだけだ。
夢を失った青年が辿り着いたのは、剣と魔法の異世界。
そこで待ち受けるのは、最強の肩書きと、最悪に面倒な責任。
これは、夢を諦めた男がもう一度“自分の生き方”を選び直す物語。
会社を辞めただけなのに、なぜか世界の運営を任されました。