あらすじ
配信と投げ銭で生きる人々の“凍結解除”を審査する夜勤担当の私は、午前02:44、解除ログに自分以外の承認印が混ざっていることに気づく。承認者は不明。だがその印が押された配信者は復活しても推薦に載らず、通知も届かず、検索にも出ない――生きているのに“いない”存在へ薄れていく。
被害の中心にいるのは告発系配信者KIRI。彼は「凍結と解除は公平ではない」と訴え、深夜だけ起動する隠しAPI「SALVAGE(救済)」の痕跡に辿り着く。解除を通す代わりに影響力を削り、声を“鞘に戻す”無害化の手続き。天使の監査か、悪魔の契約か――救済は善ではなく、削除より残酷だった。
追うほどに私自身の記録も欠け始める。勤怠表、名簿、通知、呼ばれる名前。次の救済対象はKIRI、そして私。彼の“届かない”を止めるには、空白を引き受ける者が要る。私は承認する。KIRIの声が戻る代わりに、私の名前が空欄になる。翌朝、世界は通常運転の顔で私を通り過ぎる。ログにはまだ、02:44の承認印だけが静かに残っていた。