あらすじ

西暦二〇四X年。人類の宇宙開発は、汎地球規模量子統合システム『マザー』の完璧な管理下にあった。 ヒューマンエラーを徹底的に排除した、安全で退屈な宇宙。だが、手動操縦(マニュアル)と己の直感だけを信じるテストパイロット・天童航は、そのAI至上主義の社会で「時代遅れのバグ」として冷遇されていた。 航の目的はただ一つ。二十年前、月の南極『永久影(シャクルトン・クレーター)』で起きたロスト事故の真実を突き止めること。亡き父はあの絶対の暗闇で、人類の歴史を根本から覆すような「人智を超えた巨大構造物」を見つけていた。 ある夜、突如として月の永久影から未曾有のEMP(電磁波パルス)が放たれ、地球のあらゆるデジタルインフラとマザーが完全に沈黙する。 AI網は崩壊し、月面基地に孤立した四百人のクルーの命は残り三日。 電子制御が一切通用しない電磁波の嵐の中、月へ飛べるのは、マザーを搭載していない二十年前の「旧式ロケット」と、直感任せのアナログ・パイロットである航ただ一人。 航は、最も反りの合わない合理主義のAI開発責任者・氷室をナビゲーターとして巻き込み、死地である月への決死のフライトに挑む。 太陽系の暗闇で数十億年眠り続けていた謎とは。そして、極限状態に放り出された二人は月面基地を救えるのか。 ――すべてを機械に委ねた時代に、人間の「意地」が試される。 重厚な謎と極限のサスペンスが交差する、本格ハードSFアクション。

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カクヨム
カクヨム2026/02/20
  • 現在の作品永久影の臨界