あらすじ
「必ず、魔王を討ち果たし、平和を取り戻します!」
歓声に包まれる王都の広場。金髪碧眼の完璧な英雄——勇者アレク。
だが、王立公文書館のしがない記録官であるエミルだけは知っていた。
アレクの瞳の奥が、とうの昔に狂気で焼き尽くされていることを。
勇者の隠された固有スキル『死に戻り』。
アレクは世界を救うため、そしてたった一人の聖女を救うために、1023回ものループを繰り返していた。
そして、効率よく最適解を導き出すためならば、味方を囮にし、罪のない民間人を見殺しにする「バケモノ」へと変貌していた。
その犠牲者、推定112万4300人。
誰も勇者の異常に気づかない。世界がリセットされれば記憶も消えるからだ。
——ただ一人、【絶対記憶】のスキルを持つ幼馴染のエミルを除いて。
1024回目の朝。
繰り返されるループの負荷により、世界そのものが崩壊の危機に瀕していることに気づいたエミルは、ついにペンを置き、立ち上がる。
残された猶予は、あと76回。
戦闘力ゼロ。魔法も使えない最弱の記録官は、1024回分の「死のデータ」と「情報」だけを武器に、神にも等しい力を持つ狂った勇者に、盤上遊戯(デスゲーム)を仕掛ける。
これは、世界を救うために狂った親友を、たった一人の凡人が地獄から引きずり戻すための、極限の頭脳戦。