あらすじ
王暦一八五年、南部地方都市ラギールで霊導変換炉が暴走した。六歳の少年は両親を失い、瓦礫の中でただ一つのことを覚えている。揺れと、そして唐突な静寂。
九年後、少年は王立霊脈学院に入学する。安定特化型の素質、低い出力、地方出身の孤児。目立たない学生のひとりだった。
ある日、目の前の同級生が傷つきそうになった。咄嗟に庇ったその瞬間、観測装置が異常な波形を記録した。九年前、ラギールに残されたものと同じゼロ点だった。
霊脈は制御するものだと学院は教える。しかし少年が体験してきたものは、制御でも操作でもなかった。
理解できない存在と、それでも一瞬だけ重なれた——それだけの物語。