あらすじ
誰かの本音を聞き出すことだけが得意で、自分の望みだけが分からない。
前世の記憶を持つ公爵令嬢アネリーゼは、この世界がかつてプレイした乙女ゲームに酷似していることに気づいている。シナリオ通りに進めば、卒業の日に待つのは断罪と破滅。
けれど彼女が選んだのは、ヒロインを排除する道ではなかった。
剣の才能に縛られた騎士。父の影に隠れた研究者。肩書に押しつぶされそうな聖女候補。そして、婚約者でありながら一度も自分を見なかった王太子。彼女は一人ずつに問いかける。あなたが本当にやりたいことは何ですかと。
前世で何百人もの相談者に向き合ったカウンセラーの技術が、貴族社会の中で静かに人を動かしていく。
ただ一人、彼女の計算が届かない人物がいた。ゲームには存在しなかった図書館の司書補。無口で、表情が乏しく、貴族に敬語を崩さない青年。彼だけがアネリーゼの行動の裏にある意図を見抜いていた。
全員を最適な場所に導いた先に、自分の居場所はあるのか。
誰かの幸せを設計し続けた人間が、自分の感情に気づくとき何が変わるのだろう。