あらすじ
霧の摩天楼 Небоскреб в туман
「ねえ、明日、私が突然いなくなったらどうする? 誘拐とか」
「有り得ない、そんな事」
「どうして」
「おれが守るから」
「恭平くんが?」
「決めた」
「何を?」
「おれ、警察官になる。そして、君を守る」
1997年、長崎。晩秋の氷雨が地を打つ夜。
県内の病院から、一人の少女が姿を消した。
少女──桜崎希と同じ中学校のクラスメートで、恋人同然だった桜井恭平は、必死にその姿を探した。警察も、失踪事件として捜査を進めるが、ついに見つける事は出来なかった。
2010年、東京。桜井は、警視庁公安部で外事捜査に明け暮れていた。
ある日、ロシアの諜報員である在日ロシア大使館員ストラヴィンスキーに対する捜査で、一人の日本人女性が捜査線上に浮上する。
名前は、桜崎希。
かつて青春を共有していた男女は時を経て、追う者と追われる者に変わった。
そして、桜井が辿り着いた一つの真実。それは、桜崎希の、あまりにも過酷な運命だった。
──じゃあ、その時まで、待ってる。だからお巡りさんになったら、守ってね。
約束を果たすべきは今。桜井は、大都会の闇を疾駆する。