あらすじ

コンビニで働く私は、風呂上がりに前腕の内側に“透明な角”のような引っかかりを見つける。爪を立てると皮膚の下が糸で引かれるように痛み、スマホのカメラが勝手に起動してバーコードのような線を読み取った。 表示されたのは、あり得ない文言だった。 【区分:個体】【状態:検品待ち】【保証:対象外】 【返品理由:人格不良(自己判断)】――そして【集荷予定:本日20:00〜22:00】。 翌朝、タグは腕だけでなく鎖骨や脇腹へ増殖し、検品項目には「従順性」「共感反応」「家庭適合」など、私が“怒られないため”に身につけてきた性質が並ぶ。レジのピッ音、改札のピッ音、視線の赤い照準――外界のすべてが私を読み取り、棚卸しする装置に変わっていく。 夜、玄関に現れた白い作業着の男は、淡々と告げる。「回収に参りました」。拒む私のスマホに、ついに空白だった返品先が印字される。返品先:母。電話口の母は穏やかに言う。「剥がしちゃだめ。あなたは“うちの”だもの」。 私は返品を拒むため、角を剥がし始める。しかし剥がれるのは皮膚ではなく、私の中の“何か”――泣く理由、記憶の温度、名前の重み。抵抗すればするほど、私は軽く、薄く、規格の外へ追い出されていく。 これは、身体に貼られたタグが人生を「返品」させる物語。剥がしたはずの角は、やがて別の場所で――。

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エブリスタ
エブリスタ2026/02/19
  • 現在の作品返品理由:人格不良